酔っ払ったみんなはもう、普段ではちょっとありえないほどのテンションだ。


新人ホストは、少し不慣れながらも話のついでとばかりに肩を抱いてきた。


今日、もしもこの男に持ち帰られたら、あのナンバーワンくんはどう思うだろう。


なんて、くだらない。


いつも優心と会っているからなのか、隣の彼さえもイモに見えてくる。


あたしも随分飲みすぎだろう。


仕事には人一倍気を使い、プライドを持っているはずなのに、なのに男が絡むとダメになる、弱い自分。


最後にグラスの酒を一気に流し込み、もう帰るね、と言って席を立った。


あの女の残り香漂う部屋に、帰らなくては。



「またよろしくね。」


と、笑顔を向けてくる指名ホストに一言も返さず、さっさとタクシーに乗り込んだ。


財布も気温もあたしの心も、寒くなる一方だ。


家まで帰ってきて、見上げた窓には明かりはない。


きっともうあの女はいないだろうし、ミツだって明日も朝から仕事なんだから、今頃寝ていることだろう。


そう思い、よたよたとした足取りで、でも物音を立てないようにと鍵を開け、部屋に入った。


とにかく水を一杯飲みたくて、キッチンに行くと、そこには片づけさえしてない食器がそのまま置かれている。


琴音とかいう腐った女は、他人の家にズケズケと上がり込んで来て、御馳走にまでなっておいて、洗い物ひとつしないのか。


本当に、ミツが惚れてる意味がわからない。


込み上げてくる怒りを必死で押し殺し、お風呂場に行こうとした時だった。


ミツの寝室から聞こえる物音に、体が跳ねる。


まさか、嘘でしょ?