友人たちは、社長やスポンサー会社の悪口に花を咲かせ、卓の熱気はさらにヒートアップしていた。


そうだ、所詮はあたしは、こういう方が性に合ってる。


ミツのためにと甲斐甲斐しく世話を焼いてる日常なんて、本当はただ頑張っているだけの、かりそめの姿。


なのに、どうしてこうも虚しくなるのか。



「あたし、ちょっとトイレ。」


店に来て小一時間ほどが過ぎた頃、酒がまわる中で席を立った。


フラフラとした足取りでトイレに向かおうとした時、



「おい、アンナ。」


見知った顔と、聞き慣れた声。


腕を掴んで制止され、あたしはため息混じり彼を見上げた。



「何よ、優心。」


「睨むなよ、すげぇ顔してるぞ。」


何故だか笑われてしまう始末。


優心はいつもとは違い、キメたスーツと小洒落た髪型で、普段の倍以上にオーラがある。


ロマンスのナンバーワン、公称24。



「ったく、来たんなら俺のこと指名しろよなぁ。」


「あたしはねぇ、お金払ってまで、いつでも会えるアンタと飲みたくなんてないの。」


「あぁ、それもそうだな。」


妙なところで納得した彼は、



「なら嫌がらせついでに、お前の卓にヘルプに行ってやるのも面白ぇかも。」


「馬鹿でしょ。」


どこの世界に、ナンバーワンがヘルプにつく店があるというのだ。


本当に、相変わらずのふざけた男。