「ごめん、ちょっと友達に呼ばれたから、あたし出なきゃ。」


荷物の準備を片手に言うと、まだ食事中だった彼らはひどく残念そうな顔をした。



「アンナさんともっとお話ししたかったです。」


そんな琴音ちゃんに愛想笑いだけを返し、



「ごゆっくり。」


なんて言って、さっさと部屋を後にした。


寒すぎる外の空気は大嫌いだけれど、でもこれほど安堵したことはない。


また息を吐き、早々にタクシーを拾って、街まで行った。


ネオン煌びやかなそこは驚くほど賑やかで、あたしは指定されたホストクラブのドアを開ける。


出迎えてくるのは見目麗しい男達。


友人たちのいる卓に行くと、すでに彼女らは出来上がっていた。



「アンナ、遅いってばぁ!」


「ごめん、ごめん。」


いつものホストを指名し、いつもの酒で乾杯する。


イベントコンパニオンのあたし達は、キャバクラ嬢さんほどではないにしろ、華やかな見た目を持ち合わせていると思う。


可愛い、綺麗、とちやほやしてくれるホストの言葉にご機嫌になりながら、あたしは普段以上のピッチでグラスを空ける。



「アンナちゃん、今日すごいペースだね。」


そりゃそうだ、だって今頃あのふたりが、影であたしの悪口でも言ってるんじゃないか、イチャついてるんじゃないか、と思いたくなんてないから。


あたしが指名した、大して売れてもいないホストくんは、ボトルが空いてあからさまに嬉しそうな顔をしている。


だから、好き。


考えてることが筒抜けで、これほど楽に過ごせるヤツなんていないじゃない。