◆Said:彗


一旦落ち着こうと、俺たち3人は新しい飲み物を注文した。


湯気が立ち上るコーヒーカップを持つと、煙草を吸おうとしているチカに、凪が「もっとフード深く被りなさいっ」と、小声で怒っている。


……そこは、吸うこと自体怒るべきじゃないのかな。そんなことを思っていながら、俺も何も言わないけれど。


「平気だよ。みんな、見て見ぬふりだから」


くすくす笑いながら言うチカの何気ない一言。その通りだなと、ぼんやり思っていた。


カチッとライターの音と、独特な香り。紫煙がゆらゆら舞う中で、ずっと気になっていたこと聞いてみる。


「……今、病院に通ってる?」


俺の問い掛けにチカは目を見張り、すぐに頬をゆるめた。


「彗って凄いね、凪。エスパーみたい」

「そうなの。彗はね、正義の味方なの」


……冗談言ってる場合じゃないでしょ。

そんな俺の考えが分かったように、チカはふふっと笑う。