ふいに大雅の言葉が頭をよぎる。
『祠稀くんが威光のとこにいるなら、マズいんじゃない? 謹慎中なわけだし、また問題起こしたら停学どころじゃないかもよ』
「あのままじゃ……祠稀が警察に突き出される!」
ドクンと、心臓が大きく脈打ったと同時に、濡れた瞳と目が合った。
「祠稀を……助けて……」
チカがあたしに会おうとしてくれた本当の理由は、それだと思った。
……チカは祠稀が大事で、大切で仕方がないんだ。それほどチカは祠稀に救われて、それだけのことを、祠稀はやった。
何が間違ってるとか、何が正しいとか、ひとりの物差しじゃ計れない。そんなものは人それぞれ違う。だからあたしも彗も有須も、祠稀に拒絶された。
あたしは……自分が信じた道を選ぶ。
それがあたしの、“正しい”だ。
「……彗」
祠稀が守ってきたチカが、祠稀を守りたいって、泣いてる。
「……俺、話すことはないって……帰れって言われて、悔しくて、」
「うん」
「悲しかったんだ……。もっと、何回拒まれても、聞けばよかった……俺は、祠稀にだって、救われたのに……」
そっと、俯く彗の手を握り締める。
泣いてる場合じゃない、と。浮かんだ涙を我慢した。