「だから、あんな路地裏でリンチして……それって、復讐?」

「……理解できない? いいよ、分からなくて。分からないよ。彗みたいに強くて、ひとりで堂々とあんな場所に来れて、当然のように帰る家がある君に、僕等の気持ちなんて、」

「違うっ!」


思わずチカの言葉を遮ったあたしは、なにを否定したかったのか自分でもよく分かっていなかった。


チカに一線を引かれるようなことをされたくなかったのかもしれない。


「ごめん……でも、そんな風に言ってほしく、ない……」


彗を見てしまったそれも、答えだったのかもしれない。


あたしの視線を受け取った彗が、

「俺のことは気にしなくていいのに」

と微笑んだから余計に強く思った。


「……ごめん。そうだね……比べるものじゃなかった」


何かを感じ取ったチカはそう言って、落ち着くように深く息を吐いた。


あたしはふたりの間に流れた緊迫感がなくなったことを確認し、尋ねる。


「ねえ……リンチ、って何? ふたりはいつ会ったの?」

「「……」」


流れていた沈黙が、再び緊張をまとったように思えた。


その理由が拾えないあたしを映したのは、色素の薄い瞳。