「祠稀に出逢って暫くしてから、僕は威光に入ったんだ」


チカはふふっと笑って、ぬるくなってるであろうココアを一口飲んだ。


「僕の生い立ちと、祠稀と知り合った話は終わり。威光の話は……しなくたって、もうだいたい分かるでしょ?」


……威光の、意味。威光の、存在。


きっとチカにとっても、祠稀にとっても、とても大事なもので。祠稀の、今を生きる理由。


……大雅の話は、本当?


「僕みたいな子を、救うために在るんだよ」


ああ、やっぱり……。

自分でも驚くほど冷静に、そう思った。


「……あの街で、威光が恐れられてるのはなんで?」


彗の問いかけにチカは微笑む。あたしはたまらず俯いて、目を瞑った。


「幼い子供を騙した大人を、片っ端からやっつけてるから。出回ってる噂がどんなものかは知らないけど、恐れられてるなら利用するでしょ?」

「……」

「僕みたいな子は他にたくさんいるんだよ。帰る場所も、居場所もない子が」


……胸がつかえる。うまく、息ができない。


「だけど、祠稀が現れた。僕たちに居場所を与えてくれた。今はあの街にしか作れないけど、少しでも居心地がいいようにって。あの街の光が嘘ばかりなら本物にすればいいって。居場所がないなら作ればいいって、祠稀は言うんだよ」