「祠稀に出逢えた。その日、路地裏で泣く僕の前に、祠稀が現れたんだよ」


“僕を、救ってくれた人”


コンビニで再会した時に、チカと話したことを思い出す。嬉しそうに、幸せそうに話してくれたチカは、今も変わらずそうしていた。


「何、泣いてんだって。顔を上げた僕の傷を見て、親父にでも殴られたか?って、口の端を上げて笑ったんだ。今よりずっと髪も短くて……でも、雰囲気は昔から変わらない」


“暗闇で泣いてた僕に、手を差し伸ばしてくれた人”

“僕をどこまでも自由に連れて行ってくれる”


……祠稀のことを話すチカは、どんな話をする時よりも、無邪気な14歳の顔をしていた。


「……ひとりだけ。一生その人についていく、って言ってたのは、祠稀のことなんだね」

「そう。僕があのコンビニで話した人は全部、祠稀のことだよ」


だから、笑って話せるのかな。どんな過去でも、その過去があったからこそ、祠稀に出逢えたから……。


祠稀も、そうなのかな。幸せだと思える今があるから、過去に受けた傷なんて、笑って話せるの……?



だったら、祠稀の今って、何?