「……それ……、親に?」

「うん、中2になった頃、義父に。一升瓶でね、ガツーンて。殴られた瞬間割れて、傷残っちゃったんだ」


窓の外を見たまま告げたチカに、彗が初めて視線を落とした。あたしは滲んだ涙をこらえるために下唇を噛んだ。


どうしてそんなに酷いことができるんだろう。


血は繋がっていなくても、愛した人の息子なんでしょう? どうしてお母さんは、チカを守ってあげないの……?


「……さすがに驚いたんだろうね。でもふたりとも、謝るでもなく、手当てするわけでもなく、血を流す僕を家の外に追いやったんだ。

行く場所といえば、キラキラ輝く街しかなくて。でも誰も信用できなかったから、路地裏で、うずくまって泣いてた」

「……」

「死んでしまおうかって。どう死んだらいいのかなって。僕は捨てられたから、死ぬ時もひとりなのかなって……。あはっ、おかしいでしょ」

「おかしくないっ……!」


何もおかしくないじゃん。

どうして笑っていられるの。

どうして、泣かないの……。


あたしの流れてしまった涙を見て、チカは困ったように微笑む。頬を人差し指でポリポリと掻いて、「でもね」と呟いた。