「何から話そうかな」


大通りに面する喫茶店に入り、注文した飲み物がきてからチカは口を開いた。


ここは確か、彗とパパと親戚のおじさんとおばさんが話した場所だ。



「僕の、生い立ちから話そうか」


あたしの真似をしてココアを頼んだチカは、ひと口飲んでから「甘いねコレ」と顔をしかめる。


……さっきまでは、とても幼く脆く見えたのに。


いつのまにか、ふだんのチカに戻っていた。無邪気に笑うのに、掴みどころのない、急に大人びた笑顔を見せる。


「話していいよ。……なんでも、聞くから」


あたしはそう言ってから、ココアに手を伸ばした。


チカの生い立ちが祠稀に繋がっていて、それが威光と関係あるなら、あたしは聞く勇気を持たなくちゃいけない。


自分が知らないことを知るということは、そういうことだ。


ましてや、祠稀が話したくないであろうことを、本人ではなく第三者であるチカから聞くんだ。


それは、祠稀に嫌われるかもしれないということ。分かっていながら、あたしは聞くんだ。


覚悟も、しなくちゃいけない。