「……なんで急に、話す気になったの?」
あたしが思っていたことを、彗が代わりに聞いてくれた。
チカは「うーん」と言いながら、パーカーのポケットに手を突っ込んで、俯く。
「僕はね、守ってもらう側で、祠稀のことを守ってあげられないんだ」
その言葉の意味が分からず黙っていると、
「僕じゃ、祠稀を救えない……」
今にも泣き出しそうな声で、チカは言った。
「……チカ……」
ひとつしか違わないチカが、とても幼く見えた。その背中に背負ってるものが、途方もないくらい大きく感じた。
あたしは何も言わず、チカの手を取って歩き出した。その後ろから、彗も黙ってついてくる。
何を話されるか分からない。その真実を受け入れられるかも分からないのに、あたしたちは進み始める。
恐怖も悲しみも迷いも捨てて。ただ、絆を信じた。