もしかしたら、祠稀は夜中に家を出るんじゃないかって。気付いたあたしが、止められたらって。


そしたら凪も彗も、これ以上悩まなくて済むんじゃないかって。


祠稀にとっては“それだけ”かもしれないけど、あたしにとっては、とても大事なことだった。僅かな希望を持っていた。


でも、そんなものは無意味だった。


「……出ていくの?」

「まあ、とりあえず謹慎中は。気まずいし」


引き止める言葉が見つからない。止めたいけれど、止めていいのかも分からなくなってきた。


本当に1週間だけ? 1週間、どこにいるの? ちゃんと帰ってくる?


聞きたいことはたくさんあるのに、思考の中を泳ぐだけで口から出てこない。


……あたしは結局、なんの役にも立たない。


黙るあたしに、祠稀は「ふたりにも言っといて」とだけ言い残し、家を出て行った。


ガチャンと玄関の戸が閉まった音に、眉を寄せる。



何かが、壊れてしまった音に聞こえた。