「いきなり、目が合っただけで殴られたんだよ! 意味分かんねぇよ!」


その答えに、絶句する。


見るからに遊んでそうで、喧嘩だってしたことがあるんだろうなと感じるその生徒の瞳には、恐怖からか、涙が浮かんでいた。


いくら一方的に殴っていたとはいえ、何か理由があるんだと思っていた。理由があるんだと、そう、思いたかった。


その願いすら砕かれた今、あたしに、あたしたちに、何ができると言うの?


「……本当なの? 祠稀……」


嘘でしょう? そう願いにも似た凪の問いかけが、涙腺を緩ませる。


左右を凪と彗に挟まれている祠稀は、首を捻った。


「だから、本当だったら何?」


―――パンッ!


ああ……もう……どうして、こんなことになるの?



口の端を上げた祠稀の頬を凪が引っ叩いて、どうしようもない感情が胸の奥を強く締め上げる。


「いい加減にしなさいよ!」


悲痛にも似た凪の叫びに、気付けばあたしは凪の腕に抱きついていた。