「っ! 彗!!」


揺れた空気に顔を上げると、彗が未だ生徒を殴り続ける祠稀に向かっていた。


―――ダンッ!


シン……と静まり返った中で唯一、祠稀から解放された生徒の咳き込む声が響く。


「……彗……」


凪のか細い声が耳に入っても、あたしは彗から目を離せない。


彗は、殴る生徒しか目に入っていなかった祠稀の襟元を掴んで、勢い良く床に叩き付けた。


今度は彗が祠稀に馬乗りになって、金茶の髪を垂らしながら祠稀を見下ろしている。


何をするでもなく、何を言うでもなく。


ただ、祠稀の首に右手を置いて、見下ろしていた。


……ダメ、彗。その手を、どかして。


ダメ、ダメ。やめて……。


彗の右手に力が入ったと感じた瞬間、掴まれていた腕を振り払い駆け寄った凪が、勢い任せに彗を突き飛ばした。