「…じゃあな」 そう言って背を向ける瞬間、涙が零れそうになった。 握った手がいとも簡単に離れていく。 ここで泣いたらまた困らせる……。 だから、必死で堪えた。 苦しくて、目の前が見えなくなって、どうしていいか分からなくなる。 あたしから顔を背けた音弥が、スローモーションのように鮮明に細かく映る。 鋭い目とは反対に、苦しそうな表情。 遠ざかる背中。 何故か、あたしも苦しくて寂しくて……。 痛かった。 .