「何よ」

降ってきた声の方に顔を向けると、嫌味に笑う聖夜がいた。


…うざい。



「さっきまでニヤけてたくせに態度違すぎねぇか?」

「悪かったわね」

「何でふてくされてんだよ」



そういう目が苦しい。

何かを見透かすように、あたしを見下ろして。

分かりきったように笑う。


うざくて苦しい。



「別に…聖夜に関係ないでしょ」


だから、逃げた。



聖夜に足止めくらっている間にも、音弥の姿は見えなくなっていて、必死で捜した。

このままじゃ、ダメな気がして。


後ろから聞こえる叫び声に似た、聖夜の声。
慣れたフリでかわして、あたしは逃げた。



どうしても…どうしても。
音弥に逢いたい。