「………ッ」


声の主の唇が傷口に触れた。


傷口から

指から


熱が伝わってきて……熱い。




恐る恐る、その人を見ると

「…音弥?」

瞳を閉じたまま、傷口に唇を触れる音弥を見た。



ドキン、ドキン



鳴りやむことを知らない鼓動。
それはあたしの指からも熱を発し、音弥と交信させた。





「…ったく、不器用が」


一通り血をとった後、そう呟きながらペタッと絆創膏を貼り付けてくれた。

心の中で疼いた想いは、感謝の言葉。

でも、口をついて出た言葉は……





「…なんで……」

「……は」

「どうして…ッ…音弥が」



苦しい

心とは裏腹に零れる想い



「どうして構うの…ッ…」



辛いよ

上手く表現出来ない想いは、あやふやに宙を舞う


ひらひら、ひらひら




「あたし…ッ…」


抵抗するあたしに音弥は悲しげに笑って、


「夏祭り、夕方5時に校門の前」


言ってから、あたしの頬に唇を落とした。