何やってんだろ。
今は聖夜のキューピッドにならなくちゃいけないんだから。
心に言い聞かせても、浮かんでは消えるあの人の顔。
「お前の好きな奴さ…尚輝先輩だろ?」
不意をつかれて、心臓が止まるかと思った。
「そんなわけないでしょ。ほら告白大会の練習ちゃんとしときなさいよ」
あたしは逃げた。
核心を突く聖夜の言葉に背を向けて、隣に座る千尋と話す。
バレちゃいけない。
あの人が困るだけなんだから。
そんなことになるくらいなら、あたしが傷付けばいい。
「聖夜くんと光って仲良しだよね」
「そお?構ってあげてるだけ♪」
千尋は浮かない表情であたしを見た。
そして……
「ねぇ光、本当にいいの?尚輝先輩のこと…」
開けてはいけないパンドラの箱を、いとも簡単に開けてしまった。
もう想わないって決めたはずなのに、また動き出す。
ぐーるぐーる
何度も同じ場所を行ったり来たり。
そんな恋ならいっそのこと…
「いいの。お互い傷付くだけなら一緒にいないほうが絶対いいもんねぇ」
あたしが諦めればいい。
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