「栗沢さん、どうぞ」


いろいろ考えていたら名前を呼ばれ、心臓が跳ねた。






ガラガラガラ……

教室のドアを開けて、あたしは一歩ずつ踏み出していく。


黒板には“栗沢美波”と書かれていた。
先生、字違いますよ……

先生に指摘するのもあれなので、あたしは自分で書き直した。






それからゆっくりと前に向き直って大きく息を吸い込む。


「……えっと…東京から来ました、栗沢美海(ミナミ)です。
これから宜しくお願いします。」




パチパチパチの拍手の音と共に、教室が一気にざわめきだす。

あたし……変なこと言ったっけ?



転校早々、失敗なんてありえない~……!






「そしたら、栗沢さんの席は、窓際の一番後ろ。
岡山の隣だな」

「……はい」





先生に言われた通りの席に行くと、茶髪の男の子が隣に座っていた。