「しかも遅刻してくるし、浴衣がいいなって頼んだのに着てこないし……

俺の子猫ちゃんは全く言うこと聞かなくて困るよ…ハァ」

「それは……」

「何?」




音弥の瞳は吸い込まれそうで怖い。
あたしの心を見透かしているようで、真っ直ぐすぎて。


だから、嘘は絶対つけないなって今更ながら思う。





「……ごめんなさい」

「仕方ないなぁ!」



音弥の唇がリップ音をたてて、あたしの頬にキスをした。

そして、地面に座り込んだままのあたしを立たせて


「美海のせいで花火、半分終わっちゃったけど…見に行く?」


頷いたあたしの手を引いた。





「……花火、来れて良かったね」

「美海がもう少し早く来てれば、な?」

「……意地悪」


そう言って、二人で笑った。




――…届け。