「……椿さん、これは一体どういうことかしら?」

笑顔なのに恐ろしいほど目が笑ってない沙雪に詰め寄られ、あたしは眼を泳がせてた。
今は入学式の式典が終わり、学校説明会という名目のオリエンテーションが行われている。

こういう時ばかりはあたしの苗字が高瀬であることを恨んだ。
苗字が千葉、の沙雪は出席番号準ともなれば万年ご近所さんになるのだ……。
翔君はクラスが違うので、助けも求められない。

「……返す言葉もございません」
「うん、そうよねえ? 私、その直前に目立つ行動しないようにっていったばっかりだったわよね?」
「はい……ごめんなさい……」

自業自得なので、何も言えないあたし。

あー、ほんと、ごめんね沙雪。あたしのせいでいやな注目浴びちゃって。
高校で彼氏作るって張り切ってたのにね……。

「以後気を付けます」
「ほんとに気をつけてよね?」

はい……。
美人が怒ると怖いものなのよ。そんなわけで、あたしは昔から涼兄と沙雪には逆らえないのよねー。

はあああ……。
初日からやらかしてしまった。あたしは深いため息をついた。

幸いぷっつんしてた頭でも多少の理性は残ってたようで、眼鏡を外したのは幸いだったわ。
朝の一件とは深々とかけて知らんぷりするしかないわね。

そうあたしが一人でうなずいていると、マイクの雑音が入り、生徒会長挨拶、と短く告げられた。