「でも似合ってるよ」

にっこり、そう翔君が笑うので、あたしはなんだか恥ずかしくなって照れた。
ううん、草食系男子おそるべし。
するとちょっと拗ねたように沙雪が口を尖らせた。

「ちょっと、誰も可愛くないなんて言ってないわよ。翔も、あんり甘やかさないの」
「あはは」
「まあとにかく、あんまり目立つ行動はするんじゃないわよ?」

はあい、そう答えようとしたあたしの口は、最後まで言葉を発せなかった。

ドゴン。

……は?

耳障りな衝撃音に、あたしは固まった。
音の出所を探すと、どうやら校門近くの庭園の裏側からのようだった。

「ちょ、ちょっと、椿?!」

ほとんど無意識でその場まで音もなく近づく。
背後で慌てた沙雪の声が追いかけてくるが、私の意識は完全にあちらに向いていた。


「いい加減なめた真似してっと痛い目見るぜ?」

いかにも三流な悪役が吐きそうな言葉にあたしは顔をしかめた。
ええ、何そのべたなセリフ。やる気あんの?

「……こんなところに呼びだした用はそれだけか?」

少し低めの、耳触りのいい声にあたしは視線を戻した。
みると、いかにもな不良たちに囲まれた一人の男子生徒が、じっと彼らを見据えていた。

薄茶のサラサラの髪、涼しげな眼もとにすらっとした体型。
月並みなことばだけど……ああいうのをまさしくイケメンていうんだろうな。

しかしこれは明らかに、あれよね。
カツアゲ……?