冒頭でお気づきだろうが、あたしはかなり血の気が多い。
そして腕っ節にも自信がある。
正直、そこいらの男なら三秒でダウンさせる自信がある。

まあ、ほら、若気の至りってやつじゃない?

小学生の男子とかってなにかと女子や弱い子をいじめたりするじゃない。

もともと弱い者いじめが大嫌いなあたしは、
そういう現場を見てしまうとどうしても許せなかったのだ。

そしてどんどんいじめっ子たちをなぎ倒していく内に、
ついたあだ名が【女王】――……。

うん、正直に言おう、笑えない。

それは結局中学に行っても拭われることはなく、同級生は勿論、何故かからんでくる不良どもをのしていたら、
いつの間にやら【無敗の女王】にランクアップしていた。
なにが悲しくて朝っぱらから変な不良どもに「っはよ―ございます姐さん!」なんぞいわれなきゃならんのよ。

このままじゃまずい、と思ったあたしは学区を違う地区へ変えることにした。
誰もあたしを知らないところへ。

だってあたしだって、普通の女の子らしく生きたいもの。

そしたら、沙雪と翔君も付いてきてくれたわけよ。
うんうん、持つべきものは友ね。ちょっと面白がってるけど。


「髪も切っちゃってもったいなーい」

沙雪がそういうので、あたしは自分の髪に手をやった。肩より短い、栗色のボブ。

「いいの、あたしの以前のイメージは全部払拭するんだから」