その日の夜。


パジャマに着替えてから少し開いてるお隣さんの窓に、ぬいぐるみや消しゴムを投げ入れた。



「イノリ!イノリってば」



電気が消えてるからもう寝てるのかな?

それとも部屋にいないのかな?



ためしに重みがあるものを投げてみる事にした。



「――いっ!てぇ〜!!」



投げ入れた目覚まし時計が顔にクリーンヒットしたのか、額を押さえたイノリが窓から顔を出した。



「お前…ちょっと間違ったら殺人が成立するぞ!?それに、今何時だと思ってんだよ!!」


夜中の12時です。




「一緒に寝よ?」

「はぁ!?何でだよ」

「今日お父さんと心霊番組観たから1人じゃ寝れない」



夏になるとどうして心霊番組をやるのだろう。


あんなの観て、涼しくなるハズがない。




「恐がりのクセに何で観るかね」



ヤレヤレと溜め息をつきながらも、イノリはベランダを飛び越えて来てくれた。



「イノリってなんだかんだ言って優しいよね。なんだかんだ言わなきゃいいのに」


「言いたくもなるだろ。クソ面倒くせぇ幼なじみがいると」


「…そのクソ面倒くせぇ幼なじみちゃんがいなくなったら、楽だけどきっと寂しいよ?」


「だろーな」




イノリは大きなあくびをしてベッドに寝転がると、すぐに寝息を立て始めた。



本当に寝てたんだな。

悪い事しちゃった。





でも…

ありがとう。






嬉しいドキドキ
恥ずかしいドキドキ
変な期待のドキドキ


3つのドキドキが合わさって

今夜は眠るまでに時間が掛かりそうです。