それは優越感であって、意地でもあった。



あの子みたいに素直に気持ちをぶつけられない可哀想な私の見栄。




「あー腹減った。今日はオムライスって気分。それ以外だったらお袋に文句言ってやろ」


「イノリはいつもオムライスって気分でしょ」



こんな無愛想男のクセにオムライスが大好物なんて…

やん、可愛いっ♪



って、私はバカか!!







ペチっと頬を軽く叩いて、冷静さを取り戻した。



「ねぇ…イノリはさぁ、彼女作らないの?」

「いらねぇ。今はお前でいっぱいいっぱい」



“じゃあ私を彼女にしたら?”


その言葉は飲み込んだ。





「早く泣き虫さんが独り立ちしてくれたら、心おきなく彼女作るのになぁ」

「何それ。私のせいなの?」



じゃあ一生、独り立ちするのやめてやろう。



そうすれば

一生、イノリのそばにいられる?








目の前にある大好きな背中は

今だけは、私のもの。





腕を伸ばせば抱きつけて
額を寄せれば寄り添える。



そして私がその行為をしても、イノリは文句を言ったりしない。





だってそこに

愛情はないから。







私はもう既に、あの子や他の子に負けているんだ。



イノリの彼女になれる可能性から
一番遠いのは、私だから…。