薄暗くなった教室には、いつの間にか誰もいなくなった。



校庭も静かになったし部活終了時刻だな。




「バスケ部の部室の前で待ってよ―っと」



携帯と財布しか入ってないペタンコの通学バッグをリュックのようにして背負って教室を出た。



プレハブのような部室棟に着き、バスケ部の部室の前に立つと

中から聞き慣れた怒鳴り声が聞こえてきた。




「だから!!面倒くせぇって言ってんだろ！」

「いいじゃない。たまには」

「何で好きでもねぇ奴と休日にわざわざ会わなきゃならねぇんだよ！」



ガタンと言う音が聞こえたと思ったら、突然力一杯開かれたドアが額に直撃した。


ゴンっ！と鈍い音が響いてから数秒だけ、意識が飛んだ。



「い…ったぁ〜！」

「…？――キヨっ!?」



痛いっ！

いや、本当に…



絶対おでこ割れた!!

ケツ顎ならぬケツ額になったよ、絶対。




「わりぃ。ンな所にいるとは思わなくて。…デコ打ったのか？」



額を押さえながらあまりの痛さに声が出せないでいると、屈んだイノリが顔を覗いてきた。




「見せてみろ」

「う〜…」



イノリは真っ赤になっているであろう私の額を優しくさする。



「たんこぶ出来ちまったな。…デコが広いからこうなるんだよ」

「突然ドア開けるからでしょ〜」



イノリは立ち上がると、背中を丸めて私の額に唇を寄せた。



ここ学校だよ!?と恥ずかしく思いイノリの肩の向こうに視線を向けると


悲しそうな恨めしそうな、切なそうな表情をした見知らぬ女の子と目が合った。




さっきイノリと言い合ってた子かな？