「………キヨはいつも一生懸命だよね」

「え?何が?」

「………イノリの為に何でも一生懸命だなって言った」



そりゃね。

好きな人に対してなら誰だって一生懸命になれるよ。




「………俺にはそんなに一生懸命、誰かを想ったりは出来ないな」

「カゼ、好きな人いるの?」



カゼは天井を仰ぐと、そのまま口をつぐんだ。




「………キヨ好きだよ」

「そんなんで誤魔化されないよ」

「………ふっ。キヨには嘘つけないね」



何年一緒にいると思ってんのよ。

そんな当てずっぽうな嘘くらい見抜けるよ。





「よし、終わり。まだ痛むようなら病院行った方がいいよ」


一通りマッサージが終わり、ポンとカゼの足を叩いた。



「………大丈夫。ありがとう」



カゼは財布から五円チョコを取り出すと、私に差し出した。



「………はい、チップ」

「安いチップだこと。でもありがとう」



小腹が減ってたから有り難い。




「………さて、そろそろ邪魔者は退散しようかな」


「カゼも一緒に帰ろうよ」


「………イノリと2人きりになれる時間を邪魔したりしない」




カゼは私の頭にポフっと手を乗せると、ノソノソと教室から去っていった。



別に今更2人きりになったからって、何があるワケじゃないからいいのに。