恥ずかしがるでも怒るでもなく、そのままでいてくれるイノリ。



だけどそれは

私を女として見てない証。




「そういや、ケンは?」

「あいつはくっちゃべりながら食ってっから、食うの遅いんだよ。だから置いてきた」



あー…

確かにケン、少食のクセに食べるの遅いもんね。




「少しくらい待っててあげなさいよ」

「………ケン、プリンくれなかったからヤダ」



カンナにそう呟くと、カゼは制服のポケットから棒付きキャンディを取り出した。



「カツ丼とラーメン、日替わり定食まで食っててまだ腹減ってんのかよ!?」

「………口が寂しい」




見た目は筋肉質だけどスレンダーなカゼは

何処に入っていくのか、かなりの大食いで

いつも何か食べてるし、一食の量が半端ない。



それなのに満腹になっているカゼを見た事がない。



「何であんなに食べるのに、そんなに細いの?羨ましい」

「………便秘じゃないから?」



それはあんまり関係ないような…




「………みんなも食べる?まだあるよ」


カゼは財布の札入れから板チョコを取り出した。



「なんでチョコを財布に入れてんだよ!!」

「………諭吉だから」



一万円そっくりのプリントが施された包装紙。

だから財布に入れていたらしい。




「…まさか、小銭入れに五円チョコ入れてんじゃねぇだろうな」

「………!!」

「なんで分かったの?って顔すんな!分かるわ!」

「………痛い」




イノリに殴られたカゼは、飴をくわえて少しふてくされている。