「……つうかお前人のベッドでなにやってんだ」

ようやく、もそもそと動きだした七瀬に、一息つくと私は離れた。
低血圧のために、朝の彼は機嫌がすこぶる悪い。
……まあ、普段も別に愛想も良くはないんだけどね。

「やだなあ、七瀬が抱きついてきたんでしょ? まあそんなに私といたいのはわかるけどさあ」
「……うぜぇ」
「あっはっはあ照れない照れない~」

ばしばし七瀬の背中を叩いてると、煩わしそうに払われた。
つれないなあ。

この無愛想な奴は私の幼なじみ。
雪村七瀬。
顔はやたら小綺麗なのに、いつも無表情だから、人形みたいってよく言われてる。
でも昔は泣き虫だったなんて、誰が信じるかな。
それを知ってるのは今では私だけ。

「……何でお前、毎朝起こしにくるわけ?」
「おばさんに頼まれてるのよ。まあ家隣だし? いつんなっても寝起き悪いって嘆いてたよ」
「……男の部屋にずかずか入ってくるかよ、普通」
「やだなあ七瀬」

私は明るく言った。

「今更でしょ? 私達幼なじみ、なんだから」

「……そりゃそうだ」