「ここは、何ていう惑星なの?」
僕は隣にいるママにたずねた。

「これはね、地球」
「…地球?」
「そう、わたしやエルフの星から4千万キロくらい離れているのよ」
「4千万キロ…?」

…って、どのくらいかな?

「近いけど、随分遠いってことよ」
うーん、と考え込む僕にママが言った。

そうか、随分遠いのか…。

それにしても…

吸い込まれそうだ。
「何て美しいんだろう…」
ドキドキ、した。
宝石みたいだ。

「何て、美しいんだろう…」



僕は、エルフ。
この星(地球って言ってたね)より、ちょっと小さい星に住んでる精霊なんだ。

「生き物は? 僕たちみたいなのが、住んでる?」
僕はわくわくして聞いた。
「そうね、いろーんな生き物が、いるんですって」
「えー、ママ、下に降りたいよ。行ってみてもいい? いいよね?」
「それはダメ」
ママがピシャリと言った。
「さ、もう帰りましょう」
続けて、言った。


僕たちは、自分の星を出て散歩してたんだ。
宇宙にはいっぱい、星があるんだね。

でも、僕の心をこんなにも惹きつけたのは、“地球”だけだよ―。



何だろう、
この星の美しさは。

何だろう、
この星の温かさは。



「ママ、また地球を見にきてもいい?」
「いいわよ。でもエルフ…」
「?」
「下に降りることは、絶対にダメよ」



どうしてなんだろう。
どうしてママは、そんなことを口にするんだろう…。

僕にはまだ、
それが分からなかった。