…堀口 灯吾(ホリグチ トウゴ)
簡単に言ってしまえば
彼はあたしの恋人。
世界一、大切な人だ。
「聖華…、」
「そう。あたしは聖華だよ。」
楠原 聖華(クスハラ キヨカ)
畳み掛けるように言うあたしを、灯吾はぼんやりとした表情で見上げる。
まるで記憶のピースを埋めるように。
小さな子供、みたいに。
「…ごめん、」
やっぱりわからないんだ、と彼は続ける。
あたしは途端に肩の力が抜けてそれ以上何も言えなくなった。
あたしと灯吾は大学のサークルで知り合い、一緒に過ごすうちに互いに惹かれ合った。
そして、一週間前。
付き合って1年を迎えるのを機に、二人で旅行に行くことになって。
その車中、灯吾は言ってくれた。
『卒業して落ち着いたら一緒に暮らそう。』
そして結婚しよう、と―――。
嬉しかった。
本当に幸せで、あたしはこの人と出逢う為に今まで生きていたんだ、と大袈裟かもしれないけれど
本気でそう思った。
なのに―――。