暫く歩いてから、行く当てもない私は兄の部屋にでも行ってみることにした。
ここから歩いたらどれぐらいなのだろう。
毎日送り迎えされている私には、徒歩がどれぐらいかかるかなんてちっとも見当がつかなかった。

 
ふと檻の中で飼われている小鳥も同じだろうか、と考える。
あの小さな空間でしか過ごしたことがない。
ならば扉を開けられ、自由を与えられたら、小鳥はどうするのだろうか。

 
大空がどれだけ広いかもわからない。
どこに何があるのかもわからない。
敵がいることだって知らない。

 
じゃあ、檻の中しか知らないのなら、一生檻の中で暮らす方が幸せなの?


 
その答えなんか、私にはわからなかった。
ため息すら出ない、寧ろ可笑しな笑いだけがこみ上げてきて、眩しい太陽に照らされながら私は固いアスファルトを踏みしめていた。