「う……そ、言わないで……」


漸く開いた口からは、微量な声しか出てこなかった。
掠れたようなその声は、自分のものではないような気さえしてくる。


「本音を言えと言ったのは貴方です」


いつもと変わらない斑鳩は、至極冷静な態度で言ってのける。


遠くから明るい笑い声が聞こえてきて、それが余計にこの部屋の空気を冷たいものに変えている気がした。
いや、この部屋はまるで学校から切り離されてしまったかのように思える。

 
不意に、胸が締め付けられた。


「やめて。何も知らないでしょう。軽々しく口にしないで。私がどんな人間か、知らないでしょう」

「さあ。知っていると言えば知っていますし、知らないと言えば知りません」

「変なこと言わないで。もう黙ってよ」

「いえ、それはお断りします」


私だけが噛み付く、どこか滑稽な言い争い。
斑鳩の右腕が上がり、その手のひらが私の頬に触れようとして、動きを止めた。


「貴方は、周りが全て敵だと思っているのですか」


触られる、と思って顔を背けた私に、その言葉が追い討ちをかけた。

 
自分でもわからない、それは本能だろうか。

 
私の右手が空を舞い、斑鳩の頬を激しく打つ。
乾いた虚しい音が、生徒会室に響いた。