つくづく、不思議なことを言うと思った。
いつも斑鳩は余計なことを喋ろうとはしない、なのに何故か今日は饒舌だ。

 
第一この男に一体何がわかるというのだろう。
一体私の何を見て、そんなことを口にしたのだろう。

 
じっと斑鳩の瞳を見返しても、彼は視線を反らそうとはしなかった。


「いえ、すみません。出過ぎたことを口にしてしまいました」


この言葉は口先だけ。
直感的に、いや経験上そう感じた。
斑鳩の瞳は、私の何かを見透かそうとして、まだじっと私を見続けている。


 
初めて、この男のことが嫌いに思える。
私の中で、小さなしこりが生まれた。


「思ってもないこと、言わないでくれる?」


きっと、この声はいつも以上に冷たかっただろう。
きっと、今の私の顔はいつも以上に厳しいだろう。

 
斑鳩の表情は変わらない、でも、一歩だけ私に近づいた。


「思っていることを全て口に出すのが、いつも正しいとは限りません。時には嘘も必要だと、貴方は知っているでしょう」


知っている。
そんなことぐらい、あの家に生まれ堕ちたものなら知っている。

 
どれだけ、嘘が皆好きか。
どれだけ、嘘が大事なのか。

 
だからこそ、だからこそ。