「・・・温かい。」


 そう感じた瞬間、また涙がこみあげてきた。

 
「ん。おいしかった。」


 あんなにゴネたのに結局一口だけ飲んで返した私に、彼は目を丸くした。


「もういいのかよ。」

「うん、今はこれで十分。」



 ・・・自転車も直ったことだし。


「・・・ありがと、ホントに。」


 それだけ言って、私は自転車に跨った。


「じゃぁね。」

「・・・おぅ。」


 ヒュッと自転車が風を切る。


 ・・・もう、思い出さないよ。


 それだけ心の中で呟いて、家へと私は自転車をすすめた・・・。