「ナギサ、小屋開けて」


魅稀は塔の上を見上げて不機嫌そうに言った。

ナギサって誰?とは思ったが、聞いたところで答えが返って来ないことは分かっていたので私は口をつぐんだ。

不機嫌な猫は質が悪いもの。

ナギサとやらが何者かは分からなかったけれど魅稀の言葉に応えてくれたらしい。

魅稀を招き入れるようにゆっくり開いた扉を魅稀は平然とした顔で見ていた。

自動ドア?とは間違っても聞けない。

聞いたら問答無用で殴られそうだし。

小屋の中にはベッドとテーブル、小さな暖炉が申し訳程度に置かれていた。

生活感のある、殺風景な部屋。

華やかな外の景色や可愛らしい外見の小屋の見かけを裏切る可愛らしくない部屋。

・・・ここは何?


「アゲハ、桃亜姉をよろしく」


小さく蝶に囁いた魅稀は桃亜さんを小屋の中のベッドに横たえ、深くため息をついてから暖炉の上に置かれた写真立てを一つ取る。


「魅稀?」


「うっさい零一。閉じ込められたくなかったらさっさとここから出ろ」


「は?」


閉じ込めるって何。

問いただそうと振り返るも魅稀はもう部屋にはいなかった。

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