冷血がーるの恋物語。






言われれば。




その通り。




「自分のこと棚に上げてって怒りたいところだけど。しょうがないよな。」





大河の言葉の続きが気になって顔をあげてみると。




同じように冷めた顔が、そこにあった。











「だって俺等は普通の生活出来ないし、しちゃいけないもんね。」




あっけらかんと言われたけれど、そうだねなんて、笑えない。




そうだねなんて、認めたくない。




「…本当に最悪だ。あんた。」




「別にいいよ。それで。」



何とでも言えば、とかわされる。



こいつは本当の本当に冷たい。この上なく、冷めてる。











「…そんだけ。じゃあ俺かえんね。」




そういわれても、立つことすら出来ない。




見送りだけでもしようと床に手をついたけれど。




「あと、思い出して辛いから。二度と話し掛けないで。」





大河の言葉に、視線に、床についた手をまた膝の上に戻すはめになってしまった。











朝。


いつもと何ら変わらない朝。




「あんた何したの…。」




目の前で驚いている友達を除いて。




「……うるさい。」





あれからいろいろ思い出し、そして眠れず。



涙と寝不足であたしの顔は酷いもの。これじゃ大河の思うつぼだ。





「可愛い顔が台無しだぞー?莉空ちゃん。」



これまた思ってもいないことを…。












「あ、原野だ。」




あからさまに嫌な顔をみせる実の横であたしは咄嗟に肩をすくめた。




昨日の今日であわせる顔がない。




(話し掛けるなって言われたし。)




「囲まれてんねー、女子共に。性格悪いこと教えてやりたいよ。」




女に人気があるのも、自分を隠して繕ってるからなんだって。




分かってしまうと胸が痛くなる。




「…そうだね。」









朝から驚きっぱなしの実を置いて、自分の席に着くつもりが。




「……邪魔。」



あたしの席に、群がるな。




「…ぅわ…。水谷さん。」



思いの外声が冷たくなって、大河の取り巻きを、しっかりと退かすことが出来てしまった。




あたし的には自分の席に座れれさえすればよかったんだけど。










原野と水谷。



自然に席は前後だから、あたしの席をあけた女のその先に。





大河の席があるわけで。




なおかつ、少し馬鹿にしたような、奴の得意気な顔があるわけで。




この顔はあんたのせいだって思わず言いそうになったけど、結局は何も言えずに席についた。











でも、



本当にそのまま。




何か言ってくるわけでもなく時間が過ぎたから、少し、哀しくなった。





(…て、何言ってんの。あたし。)





そう机に突っ伏したその時に。






「…水谷さんって本当に性格悪いんだね。さっきの超怖かったし!」






小声で聞こえた女の声。












いつものことだと思えたら、普通に流せることができたのに。





それがすぐ前から聞こえたもんだから、あたしはふと大河を見た。






すると大河はあたしが見たのを確認したかのように口元だけに笑みを浮かべて、呟いた。