冷血がーるの恋物語。






「…大好きだから。また逢おう。」





「当たり前だ。」






笑顔のまま別れたくて大河より先に背中を向けた。





きっと笑顔なんて、綺麗なものじゃなかったけれど。











「……馬鹿大河。」





大河があたしより大人だったのが気に食わなくて。





最後に聞こえないように悪態をついた。






これが聞こえて、大河が少しでもこちらに意識を向けてくれたらいいのに。











再び出逢う場所も時も何も決めなかったのは、あたしの最大級の意地。





だって、あたしたちが出逢えたのが運命だとしたら。


絶対にまた逢えるんでしょ?





そんなこと決めなくてもまた何処かで。




それまでに強くなるよ。





大河に負けないくらい、強く。
強く。










あの時
起こったことも



あの時
顔を合わせたことも




ここまで来たことも



このクラスになったのも



全ては
偶然じゃなく必然で






運命だった






と彼は言った。



そしてあたしは今でもそれを信じている。











「もうすぐ卒業式だよ。」




実の言葉に小さく頷く。





あの日以降。


大河を見ていない。



そもそも学校に来ていない。


時が経つのは、すごくはやくて。




気が付けば卒業式。












大河は本当にどこまでも有言実行で、自分中心だった。




泣かせたいと言われあたしは泣き、気に入ったと言われ今度はあたしが離れられなくなった。




世の中はあいつの思考で作られているんだろうか。











少なくとも、あたしの人生は全てあいつに左右されているわけで。




冷血と呼ばれたあたしも知らない間に喜怒哀楽をはっきり出すようになっていた。





今ではクラスの誰とでも仲良く笑いあえている。






もちろん。





奴のことは一時だって忘れたことはないけれど。













「(…卒業式だよ。)」





あれだけ連呼していた運命とやらは何時くるのだろう。





卒業したら、もう絶対。





あたしが何処にいるのかもわからなくなってしまうというのに。





あんなことがあったな、なんて想い出にはしたくない。






早く、早く。




迎えにきてよ。














あの日。





『…原野もあんたも、本当に馬鹿だよ。』





『……うん。』





実と椎は、事情を大河から聞いたようで。





『大馬鹿。』





この様だ。