理由は分かんないけど、
何も言われない心地よさにあたしは甘えて、それにすら気付かないフリをしようとしてる。
大河と前の関係に戻らないように、
勝手にそう思い込んでる。
「……あたし、馬鹿だもん。」
「本当にね。馬鹿。」
あたしはものすごく、馬鹿なことをしたんだと思う。
「……友達なんかになったら臆病になるんだから。」
消え入るような声だったけど、はっきり聞こえた実の声。
やっぱり全部お見通しだって、実感した。
だけどあたしには、
それを聞き返す勇気なんてあるはずがなく。
あたしの
『気付かないフリ』
はどこまで続くのか、不安になった。
「「つまんない。」」
「「…は?」」
あれからなんだかんだで一緒にいるあたしたち4人。
もちろん、椎は納得してない。
そんな椎をおさえるのが実。
この2人、結構お似合いだと思う。
なんて、気が抜けたことは言ってられなくて。
「いきなり何なんだって。お前等。」
「つまんない。」
「うん。つまんない。」
2人して呆れたような顔。
こいつらさっきまで笑ってたくせに。
突然の態度の豹変に若干引く。
「…あんたら今の今まで笑ってたじゃん。」
「そーゆうんじゃなくて。喋るたびにみんなこっち向くんだもん!」
椎がクラスにいる人達に聞こえるように言うと、誰もが肩をすくめてびくっとした。
あたしが人と話してることが、
その人が大河や椎だってことが、
そんなに気になるだろうか。
「本当、やだ!」
椎はぷうっと頬を膨らませて周りをもう一度、ぐるっと見渡す。
「…椎ちゃん。ほかっときなって。」
「…はーい。」
「それと。」
今度はあたしと大河に視線を向ける実。
何か、言われるようなことした?
まあ、心当たりはたくさんあるんだけれど。
「楽しい?」
…何か本当に。
この人たちはあたしに伝わらないように会話してるのかって。
それなのに。
「…だったら?」
大河には伝わる。
察しがいいのか。
勘がいいのか。
もしくはあたしが鈍いのか。