「だめだっ、
 階段からは降りられない。」

「えっ、ほんとに火事なの?」

ノブオの顔が
見る見る内に青ざめました。
タケシは固まる
ノブオの手を更に
引っ張って、
またノブオの部屋に入り、
窓を開けました。

「さあ、飛び降りよう、
 下は土だし、
 大した高さじゃないから
 死にはしないよ、
 丸焼けになるよりましだろっ。」

しかし、ノブオは
タケシの腕を振り払い、
一歩後ろに引きました。

「無理だよ、僕、
 高所恐怖症になったって
 言ったじゃないかっ。」

タケシは、呆れつつも、
すぐに切り返しました。

「そうかっ、じゃあ、
 僕も一緒に残るよ、
 大人しく丸焼けになろう」

「そんなーっ。」

ノブオは戸惑いを
見せながらも、
そのタケシの態度により、
自分が何とかしないと、
という思いにならざるを
得なくなりました。
そして、ノブオの表情は、
次第に引き締まってきました。

「わ、分かった、飛ぼう。」

タケシとノブオは、
窓枠に足をかけました。

「よし行くよ、
 ワン・ツー・スリーッ。」

タケシとノブオは
手を繋いだまま、
勢いよく飛び出しました。

「タケシ君っ、危ないっ。」

なんと、ノブオは、
空中でタケシを
かばうように抱きかかえ、
自分が下になるように、
地面に落ちました。