「お腹空いてないなら、ドロップはどう?」

ケントはあくまで控えめにテツヤくんの前にドロップ缶を差し出した。

テツヤくんは、渋々ドロップ缶を受け取った。

結局食べるんだ。

だってさ。

やっぱりこういう状況でも、よくよく考えたらお腹空いてるもん。

いつもよりは喉に通らない感じかもしれないけど、私もドロップならほしい。

甘いものって、癒されるし。

テツヤくんの横で小さくうずくまっていたナホもドロップを一つとった。

そして、私も。

缶の中から転がるように出てきたドロップは不透明な白色。

ハッカ・・・か。

普段ドロップの中では一番残しておく味なんだけど、なんだか今はそのハッカの味が恋しい気がした。

すぐに口に入れる。

鼻から吸い込んだ空気が、一気に私の思考も体もクールダウンしてくれるようだった。

テツヤくんもナホも口に入れたドロップを静かにゆっくり味わっていた。

でも、そうやってなめてるうちに、皆の表情が少しずつ和らいでいくのがわかる。

そう。

皆お腹が空いていた。

そして、ドロップの甘みが私達の緊張を少しだけ和らげてくれていた。