ザックザックと砂を踏みしめる音がこちらに近づいてきた。

テツヤくんだった。

びしょびしょの頭、目はうつろだった。

あの男前が、今はとても頼りなげな存在に見える。

「ケントくん。今見てきたらあっちには小さな森みたいなのがあった。」

どうやら、ケントに頼まれて、この周辺を散策してきたみたいだった。

「テツヤくん、サンキュウ。じゃ、火は起こせるな。」

ケントは神妙な顔つきで言った。

こんなまじな顔のケントも初めてだ。

「ここどこなんだよ。ったく。」

テツヤくんはケントの横に腰を下ろした。

「こんなことになるなんて、本当にごめん。」

ケントはテツヤくんに頭を下げた。

テツヤくんは、深くため息をついてうつむいた。

「とにかく、助けが来るまではここで何とか生きてかなくちゃならないから、俺命張って皆を守るよ。」

ケントは決意したように立ち上がった。

そんな格好のいいこと言って、それがどれほど大変なことかってわかってんのかしら。

ケントはそばにあったリュックサックを広げた。

「万が一のこと考えて、1週間分の食料は持ってきてるんだ。一人分はわずかだけどさ。」

テツヤくんはちらっと見て、苦笑いした。

「1週間で助けが来ればいいけどな。」