ボートは思いの外揺れていた。

揺れるというか、転覆寸前の勢いで沖へ沖へと流されていく。

軽いボートの不安定さは、乗った瞬間から感じ取れた。

ナホと私は、必死にボートの縁にしがみつきながら、声がかれるほど叫び続けた。

テツヤくんもさすがにびびっているのか、声こそ出さないけれど、唇は紫色になっている。

ケントは・・・

腹立つくらいに余裕の表情で沖を見つめていた。

時折、方位磁石らしきものを眺めながら。


こいつーーーー!!

何企んでやがんだ!


そう思わずにはいられないほどの余裕ぶりだった。


「ね、ねぇ。ケントくん。もう戻ろうよ!絶対やばいって。」

ナホは半泣き状態でケントに懇願した。

「ケント!まじでやばいよ!出発地点が見えてる間に戻らないと!」

ケントは、笑いながら答えた。

「まだ大丈夫だって。俺、ちゃんとわかってるから。」

何わかってんだよ!!

わかってることは全て説明してから、私たちを乗せろっての!