テツヤくんは、さわやかな笑顔でナホの頭をなでなでした。

ナホもうれしそうな顔でテツヤくんを見上げてる。

うぅ。

正直、こういうべたべた系は好きじゃないから、うらやましいなんて思わないんだけど、

やっぱこう間近でやられると、私の存在が無視されてるようでいい気はしないわけで。

と、そのとき、テツヤくんがふいに私に向き直った。

「カナちゃん久しぶり。元気だった?」

「うん、元気。今日はごめんね。変なことに付き合わせることになっちゃって。」

「そんなことないよ。海の上をボートで揺られるなんて経験、そうできるもんじゃないし。ユニークなカナちゃんの彼氏に会えるのも楽しみにしてるよ。」

すみません。

心の中でつぶやきながら、テツヤくんに頭を下げた。

「ささ、はやく行こうよ。海まで少し距離があるし。」

ナホがあわてた様子でテツヤくんの袖をひっぱった。

あ。

やきもちやいてる??

ま、そうだよね。

付き合って間もないんだもん。

いくら私とはいえ、自分以外の女の子と親しげにしゃべってる彼氏を見るのはつらいか。

「そうだね。じゃ、とりあえず、海に向かおう。」

私も笑って切符売り場へ急いだ。