☆サイレントウォーク(3)

本当は俺だって怖い。目前には餓死が迫っている。なのに勘だけを手掛かりに前に進む。そうする他に生きていくすべはない。
でもこんな俺の気持ちを、子に知らせてはいけない。不安にさせてはいけない。

俺が幼い頃、でっかい父親の手のひらと手をつないだ時の気持ちを思い出した。
怖さがおさまった。頼もしいと思った。何でも出来るような気持ちになった。
俺は父のようになれるだろうか。そんなことを思った。

太陽が沈み、キャンドルの灯りは世界でいちばん明るい存在となった。
波の音が響いていた。彼女の香りと体温が嬉しかった。
サイレントウォークのゴールは、もうすぐだ。



<つづく>