ショックを受けているのか、それとも心当たりがあるのか、勝彦は黙ったまま。

 その時の表情を確認する勇気はなかった。

 私は構わず話を進める。

「かっちゃんの嘘に気付いたのはね、別の男のことを調べてる時だったの」

「別の男?」

「そう。私を騙した、元彼氏」

 勝彦の腕の力が、また少し強まった。

 背中に感じる勝彦の体が熱い。

「メールを読んだり、着信履歴を見たり。かっちゃんから彼氏らしいメールなんて届いてなかった。店空いてる? とかそんなのばっかりで……それで、怪しいと思ったの」

「そっか」

 静かに優しくそう言った勝彦は、何も言い訳や反論をしようとはしない。

 ただ、私を抱きしめて聞いていた。

「かっちゃんは付き合って1ヶ月くらいだって言ってた。私が中絶の手術をしたのは今日からちょうど1ヶ月前。音信不通になった彼との子供ができたってわかって、中絶する決意をして……そんなナイーブな時期に、新しい彼氏なんて作るわけないもん」

 説明しながら彼と付き合っていたのが嘘だったことが身に沁みて、涙声になった。

 ねえ、かっちゃん。

 どうしてそんな嘘ついたの……?