この日の夕食は、仕事中に見つけたというオシャレなハンバーグレストランだった。
「熱いから火傷しないようにフーフーして食べるんだよ」
「わかってるよ。もう、子供じゃないんだから」
ナイフとフォークを持つ私に、勝彦は父親のような面持ちだった。
私の言い分に自嘲すると、自らもナイフとフォークを持ち、細かくしたハンバーグを口に入れる。
「あっつ!」
注意した本人が火傷してるし。
何気にドジなんだな。
笑いは自然にこぼれた。
お冷の氷で舌を冷やす彼を横目に、私はしつこくフーフーして、悠々とハンバーグを口に入れた。
「うん、美味しい」
「ほらほらっは」
「は? 何?」
本当はわかっている。
氷を口に含んでいる彼が「そりゃよかった」と言っていることくらい。