契約社員、か。
7月までしか給料が振り込まれていないということは、恐らく6月で退職している。
契約社員ということもあって退職金はないのだろう。
母のスナックを手伝っていたと聞いていたが、昼の仕事もやっていたとは。
「どうして会社、辞めたの? お母さんの店を継ぐことにしたとか?」
母は物悲しく微笑む。
「それだと嬉しいけど、違うのよ。いわゆるリストラ。最近、また不景気だから」
リストラか……。
契約社員から切られるのは、社会的に仕方のないことかもしれない。
なんて、自分のことなのに他人事のようだ。
通帳の項目ばかり眺めていたが、次は金額の方に目を向けてみる。
収入はもっぱら契約社員の少ない給料のみ。
支出は携帯代と、ちょこちょこカードで引き下ろされた分。
そして、異常な記載に気付く。
通帳の始めのページでは、貯金は160万近くあった。
〈5-19 ATM お支払い金額 1,500,000*〉
「はぁ?」
思わず声を上げてしまう。