「あなた、一日で何件も病院を巡ったのよ。たぶん自殺するつもりで」

「でも、処方箋の説明書きはひとつしか……」

「全部捨てたわよ。薬を取り出した後のゴミも、全部。でも、残っていたのね」

 ティッシュで涙を拭く母を見ると、心が痛かった。



 鷲尾病院の精神科に行ったのは7月ごろだった。

 自殺とは関係なく、純粋に不眠症に悩んでいたのだと思う。

 その時の説明書は引き出しにしまってあった。

 自殺を図ったのは8月の下旬。

 病院を巡ったのはきっと当日に近い日だ。

 手当たり次第集めた睡眠薬の説明書なんて、きっとすぐゴミ箱に入れただろう。

 それを母が処分した。

 だから私は見つけることができなかった。

「自殺の理由に、心当たりはある?」

 酷な質問のようだが、これを聞かないわけにはいくまい。

 しかし母は首を横に振った。

 肩を落としていると、彼女はスッと何かを差し出してきた。