ため息を落とした母は自分のジュースを一口すすった。

 ゆっくりグラスを置き、テーブルの上に手を組む。

 真実を告げる覚悟ができたらしい。

 そして俯き、小さな声で……

「自殺未遂だったの」

 短く告げられた、真実。

 私が病院に運ばれた理由。

 記憶を無くした要因。

 自殺未遂。

 心を病んでいたことを結びつければ、案外素直に信じられた。

「どうやって?」

「睡眠薬を、大量に飲んだの」

 涙声になっている。

 娘に先立たれそうになった親の心情とは、きっと相当切ないものなのだろう。

 彼女は指で目頭を押さえ、短く息を吐いて耐えていた。

 娘である私に、涙を見られまいと。

「睡眠薬、そんなに大量には処方されてないはずなのに」

 新たな謎は、意外にも簡単に解決した。